2019年6月17日月曜日

弓サイズと引尺を考える その2

弓サイズと引尺を考える その1 に続きUukhaのリムデータをもとにForce Draw Curve を描いてみます。

まず、実際の引き尺とリムの強さのデータをUukhaのホームページ の「Calculate poundage at your draw length」の計算機能を利用して入手しました。

この計算機能は、引き尺20"以上のポンドしか計算できないので、20"から33"の引き尺の範囲で次の2ケースのデータを作成しました。

1. 25"ハンドルの66Bow、68Bowおよび70Bowのデータ
2. Short Limb(25"ハンドルで66Bowのリム)で21"、23" 及び 25”ハンドルでのデータ

いずれもリムの呼びポンドで32#(28" ATA Draw Lengthのリム)のデータとしました。

1. 25"ハンドルの66Bow、68Bowおよび70BowのForce Draw Curve

上のForce Draw Curveには、3本の曲線と3本の直線を描いていますが、見た目には1本のデータのように見えます。

Uukhaの計算機能が示す値は、25"ハンドルで66Bow,68Bow及び70Bowが全く同じ値でありLimb Sizeの違いよるカーブの違いはありません。

違いは、推奨Brace Heightが次の通りとなっていることです。
   66Bow---8.3",  68Bow --- 8.6",  70Bow---8.9"

このBrace Heightの違いが、スタッキングポイトの違いとしてグラフに表れていますが、ほとんど同じといってよいと思います。

このことは、limbの長さの違いによりる引き心地の違いはないと言えますが、弓を引いたときのリムの形はことなりますので、引手の指の弦の当たり方のみlimbのサイズにより違いが生じることになりす。

また、その1で示した典型的なForce Draw Curveとことなり、UukhaのリムはStacking Pointを過ぎても、ポンド上昇率が急激ではなく、Sweet spotが広いリムと言えます。


2. Short Limbで21"、23" 及び 25”ハンドルのForce Draw Curve

上のForce Draw Curveには、3本の曲線と3本の直線を描いています。

28”のATA引き尺において32#のShort Limbですが、ハンドルサイズの違いにより28”の引き尺のポンドが次の通り異なります。

  25"ハンドル----32# 23"ハンドル----33.3# 21"ハンドル---34.1#

ハンドルを短くすいれば、同じリムを使ってもポンドアップが起きることがわかります。

また、Stacking Point の位置が微妙に違いますが、これはやはり推奨Brace Heightの違いによります。
   66Bow---8.3",  64Bow --- 8.1",  62Bow---7.8"

3本の曲線の形状もほとんど同じで、ハンドルの長さの違いによりる引き心地の違いはないと言えますが、ポンドアップが起きるため引いた感じは全く違ったものとなります。

64Bow、62Bowでもリムボルトを緩めてポンドを下げれば、66Bowとほとんど同じForce Draw Curveとなります。

Uukhaのリムは、62Bow~70BowのStacking Pointが引き尺で28"~28.5"にあり、Bow SizeによりStacking Point が移動しないリムと言えます。


3. Brace Height の影響
25”ハンドルの70BowでBrace Height を8.1"から10”に変えた場合の影響を調べてみました。


Brace Heightを8.1"から10"に変更した場合、スタッキングポイントは、引き尺28.5"から29.3"と0.7”程移動します。

また、Brace Heightを下げると矢速は増すが、矢飛びの安定性が落ち、Brace Heightを上げると矢速は減少するが、矢飛びの安定性が増すと言われています。

矢速については、Brace Heightを下げると弓から受けるエネルギー(Force Draw Curveの面積)が増すためで、安定性が落ちるのは、弦と矢の接触時間が長くなり、弦の振動の影響を受ける時間が長くなるためです。(Brace Heightを上げた場合は、逆の現象となります)

2019年6月16日日曜日

弓サイズと引尺を考える その1

「WIN&WINの弓サイズの決め方」に、弓の性能が引き出せる「引き尺」ごとの「ハンドルとリム」の組み合わせが示されています。

また、Uukhaの取説には、次のように推奨されるハンドルとリムの組み合わせが記載されています。(以下引用)

Recommended setup:
AMO draw         bow  riser  limbs
  length
  27''      66''  25''   66''(ショートリム)

  28''      68''  25''   68''(ミディアムリム)

  29''      70''  25''   70''(ロングリム)

  30''      72''  27''   70''(ロングリム)

  31''      74''  27''   72''(エキストラ・ロングリム)
AMO draw length = distance in inches between the nock and the pressure button + 1.75 ''.
72 '' limbs are only available for Vx+ model.

注)
Uukhaは23"のハンドルはありません
riserはハンドルのこと
現在、リムのサイズは25"のハンドルに付けたときのBow Sizeで呼ぶようです。(Win&Winの最新カタログも、66"、68"、70"となっていました)

両社の推奨サイズは微妙に違いますが、なぜ、引き尺(draw length)の短い人には小さい弓サイズ(bow size)が推奨されているのでしょうか。

今回は、そのあたりを考えてみます。

会話で同じ用語でも意味が人により違うことがあります、特に「引き尺」(Draw Length)は違うことがあり、話が成り立たないことがあります。

まず、ここで使用する用語をArchery Trade Association (ATA)(昔はAMOと言っていた)の引用で説明します。

1.用語の説明
1)弓サイズ・弓の長さ(Bow Size or Bow Length)
Bow Designated Length:
The length of the bowstring used to “brace” the bow to its manufacturer’s recommended Brace Height plus three inches.

弓の呼び長:
メーカー推奨のBrace Heightとなるbowstring (弦)の長さプラス3"とする。

注)弓の呼びサイズは2"ごとに呼ぶことが慣習となっていますので、同じ呼びサイズでも、実長は±1"(最大2"以上)の違いがあり得ます。

Brace Height:
The dimension in inches from the grip pivot point (low point) of the grip to the nearest side of the bowstring, measured perpendicular to the bowstring, with the bow strung and in the undrawn condition.

ブレースハイト:
弦を張って引いていない状態で、ピボットポイントの一番低いところから弦に対し垂直に計った長さ。
注)日本では、Brace Heightをストリングハイトと呼ぶことがありますが、String Heightは弓の長さとして使われることもあります。

2)引き尺(Draw Length)
ATA Actual Draw Length:
The distance from the bowstring at the nocking point location, while at the bow’s full-drawn condition, measured to a vertical line through the pivot point of the bow grip, plus 1¾ inches.

ATA実引き尺:
DLPP(次項参照)+ 1 3/4"

Draw Length Pivot Point (DLPP):
The bow’s true draw length. This is the distance at the bow’s full-drawn position measured from the string at the nocking point to a vertical line through the pivot point of the bow grip.

ピボットポイント引き尺:
弓の真の引き尺。フルドローで弦のノッキンクポイントからグリップのピボットポイントまでの水平距離。

3)強さ・ポンド(draw weight)


Bow designated draw weight:
Bow weight shall be designated as the force required to draw from brace height to ATA Actual Draw Length of 28 inches.

弓の呼び引き強さ:
brace heightからATA引き尺で28"まで引くのに必要な力を弓の呼び強さとする。



2. リムの効率
1)引き尺が短い人(一般に背の低い人)が、長い弓を引くと、引き込み不足になり
2)引き尺が長い人(一般に背の高い人)が、短い弓を引くと、引き込過ぎとなる、
と言われています。

1)は、弓の性能を100%は発揮できない(矢速が遅くなる)が、弓を射ることに問題はない 2)は、Stacking Pointを過ぎて、弓が引き難くなり、さらに引くと危険である
と言われています。


この「弓の性能を100%は発揮できない」「弓が引き難くなる」をForce-Draw Curveを使って考えてみます。



Force Draw Curveは、弓を引いたとのリムからの力(左の軸)とリムに蓄えられるエネルギー量(曲線の下の面積)を引き尺(Draw Length 下の軸)との関係で表すグラフです。(矢速を考える 参照)

引き始め、Brace Heightから一気にリムの反力が上昇し、その後、引き込み量に合わせてリムにエネルギが緩やかに蓄えられます。

リムの反発力の上昇率(曲線の傾き)が、Brace Heightから曲線に引いた接線に近づく直線部をSweet Spotと呼び、リムが高い効率を示す引き尺です。

Brace Heightから曲線に引いた接線との交点をStacking pointと言います。

3)「弓の性能を100%は発揮できない」わけ
フルドローの時にSweet Spot付近まで弓が引かれていることを前提にリムは設計されす、その付近でリリースされたときリムの能力が発揮されます。

Re-curve(後ろに反り返った)Bow(弓)の特徴は、リムの先端の反り返った部分が反発力の源であり、その部分の反発力を効率よく使うには、リムから弦が十分に離れる必要がありますが、引き尺が短い人が長い弓を引くと、リムから弦が十分に離れません。(写真参照) 

4)「弓が引き難くなる」わけ
Stacking pointより更に引き込むと、急激にリムの反発力が強くなり、弓が引き難くなります。(リムが硬く感じられる

さらに弓を引き、リムと弦がなす角度が90度付近になると、弓を引く力はリムから弦を外す力となり、弦が外れる可能性があり非常に危険な状態となります。

3.引き尺と弓のサイズ
引き尺が短い人でも、引き尺に合ったサイズの弓を選ぶことで、フルドローの時に効率のよいリムの形を作ることができます。

図は、68"Bowのサイズを1として、各弓のサイズに合わせて図を拡大(70"Bow)及び縮小(66"、64”Bow)したものです。



各図とも弦とリムがなす角度は同じで、相似則が適用できない寸法は、DLPP(Draw Length Pivot Point)に1 3/4”加えてATA Draw Lengthを求める部分です。

この部分を考慮して、各弓のリム効率の良い引き尺を求めてみます。

68"Bowの引き尺 が28"(ATA Draw Length)の時、リムの形(効率)がよいと仮定します。

ことのき、引き尺のDLPP部は、相似則により弓の長さに比例するので、各弓の引き尺をATA Draw Lengthで表すと、
(Bow Size/68"Bow Size)x(ATA-28"のDLPP(28-1.75))+1.75
となります。

実際に各弓のリムの形(効率)がよい引き尺は、
 70"Bow --->70/68(28-1.75)+1.75=28.8"--->29"
 68"Bow --->68/68(28-1.75)+1.75=28"
 66"Bow --->66/68(28-1.75)+1.75=27.2"-->27"
 64"Bow --->64/68(28-1.75)+1.75=26.5"--->26"
となります。

最初に書いたUukhaの取説と同じ結果ですが、意図したものではありません

弓サイズと引尺を考える その2」は、Uukhaのリムデータを用いてForce Draw Curveを描いてみます。