2016年7月29日金曜日

ティラーハイトでセティングを学ぶ(その1)

学ぶシリーズ 016

自分の弓を買って最初に行わなければならないのは、行射できるように弓を設定(Basic Setting)することです。

まったく初めての場合は、ショップにお願いするか、射場の指導員等にお願いしてください。

まず、Tuning(実際に矢を射て調整すること)の前にする設定(Basic Setting)の例を見たいと思います。(一部ショップのサイトにリンクしています)


この中で、直感的に理解できないのが、Nocking Pointがレストより上にあり矢が下を向くことと、Tiller Heightの上下差だと思います。
これについては、次回のその2で考えてみます。(Basic Settingが長くなりすぎて時間切れです)

0. 必要なものを調べる
・ハンドル (リムボルトの高さが上下同じか調べます)
・リム(上下でマークが違います、取り付けを間違わないように)
・レスト(両面テープも必要)
・プランジャー(ねじが沢山ついています、役目と使い方を覚えます)
・弦(上下があります)
・矢
・Tゲージ(T型の定規)
・ストリンガー(弦を張るひも)
・調整工具(主に六角レンチ)
・サーピングの糸(ノッキングポイト用)

1. 弓のセンターをチェックする(調整する)
弓を組み立て、弦を張った状態で弦が弓(リムとハンドル)の中心を通ているか調べます。
詳しくはこちらに載っています。また、センター調整ネジの使い方は取説等に記載されています。

弦が弓のセンターになくても設定は可能ですが、調整の再現性を確保するためには、弓のセンターと弦を一致させておいた方がよいと思います。

弦を見る方向が狂うと、センターも狂って見えます。再現性のあるセンターを出したい場合は、レーザー等を使用すると良いかもしれません。

2. ノッキングの強さを確認する
2.1 弓を下向きにして、弦のセンターサービングに矢を番えます
2.2 下を向けた状態で矢が落ちないことを確認します
2.3 指で弦を強く弾いたとき、矢が落ちることを確認します

弦を購入するとき、使用するノックに合っている太さの弦を購入すれば、2.2と2.3はクリアーできます。

自然に落ちたり、弾いても矢が落ちない場合は、矢のノックを代えるか、サービングの太さをかえます。

3. レストをつける
プランジャーと干渉しないように、水平に取り付けます


4. プランジャーをつける(SHIBUYA DXプランジャーの場合)
4.1 ばねは中間の強さを使います
   また、テンション調整ネジで強さを中央に調整します
4.2 センタースライダーで矢のポイントを弓のセンタに一致させます
   (Full Center)
4.3 レストを調整し矢の中央にプランジャーピンが来るようにします

4.4 アルミ矢の場合は、センタースライダーで1/4回転分矢を左に出し、カーボンの場合は、Full Centerのままとします

レストから矢が自然に落ちないように、レストピンには傾斜がついています。 上から見たとき矢より外側にピンが見えないように調整します。
   


ノッキングポイントの測り方は、ノッキングポイントを考える参照。
4. ノッキングポイントを作る
4.1 高さを決めます(5mm FITA Manual
4.2 下側のノッキングポイントを作ります
4.3 上側のノッキングポイントを作ります
4.4 幅は矢のノックが入り、ガタがなく、固くもない幅とします
4.5 ノッキングポイントに矢を番え、2を再度確認します

ノッキングポイントに金属製のものを使うのは避けた方がよいと思います、弦の中央が重くなるため矢速が落ちる場合があります。

弦のセンターサービングの糸と同じ太さのサービング糸を使うと、移動可能なノッキングポイントを作りことができます。

弦のサービングがボルトの役目をし、ノッキングポイントがナットの役目をします。

ノッキングポイントのTuningが終わった後に瞬間接着剤を一滴たらし、固定します。(なくても自然には動かないが、念のため)

5. サイトピンを弓のセンターに合わせます 
弦、弓の中心、サイトピン、矢のポイントが一直線上にくるようなったはずです。


6. Brace Height(ストリングハイト とも言う)を調整する

弦をねじることによりBrace Heightを調整します。
設定値は、弓の取り扱い説明書にある値の範囲で、中央値より上(中央値と上限の間)の値とします。

少し高めの方が、クリアランス(矢と弓の間隔)の問題が発生しにくいと思います。

Brace Heightの調整により矢が弦から離れる位置を調整することができ、低い方が矢速は早くなりますが、高い方が矢の振動が小さくなります。

7. Tiller Heightを調整する
Tiller Heightは絶対値ではなく、左図のa(上側)-b(下側)の値を求めます。

Tiller Heightをプラス側(Positive Tiller a>b)にする方が多いと思いますが、現在は、0が主流かもしれません。


山本博氏の講習会記録には
○ティラーハイト 
・今の弓はティラー差0で良い(動的ティラー差も) 

の記述があり、

FITA Coach’s Manualには
Recently most archers adjust the tiller to zero. 
(最近、ほとんどのアーチャーはテイラーを0に調整する)

の記述があります。

シューティングテクニックを学ぶ の異端のアーチャー(世界チャンピオンの秘密と技術)には、
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ティラーの起源は、スタビライザーやテイクダウンボウ、リム調整ボルトなどが存在しなかった何百年も前である。

弦を引く手と弓を持つ手の位置が違ったため(弓を持つ手が下にくる)、もし弓がしっかりと握られたとき、上リムの方が下シムより強く働く。つまり矢が放たれたとき、より長い距離を動かなければならない。

両方のリムがまったく同時に「ピッタリ合う」ようにするために、下リムは上リムよりも強く作られた。これは、弦の上下のリムまでの距離の差と解釈され(今でも伝統的な弓には適応する)、ティラーと呼ばれるようになった。

途中略

自然にティラー差を持つリムの生産をやめることとなった。下リムがより高いドローウェイトで作られることはなくなった。
今現在では、ほとんどのリムが、上リムと下リムでまったく同じドローウェイトを持っている。(誤差はあるが)

リムボルトを使って弓のティラーを変えることは、現実には、ドローウェイトを変えることではなく、ハンドルにたいする角度を変えるだけである。理想的でないが、実際、角度が変われば上下リムはそれぞれ違う動きをする。 現代の弓においてティラーを調整することは、「弓を引いている時は完璧にバランスが取れているが、動的なレベルにおいて完全に不安定である」と言う馬鹿げた状態に陥る可能性がある。

途中略

最善の方法はティラーをいつも0にすることである。こうすることによって、両方のリムがハンドルに付いた時に同じ状態で働くことを保証できる。

つまり、ティラー差よりも、上下リムの差し込角度が同じである方が大事だ。

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と、色々ですが、Tiller Heightを0から数ミリに合わせます。

これで初期設定は終わりです、再度 4~7までの寸法を確認します。
Tiller Heightを調整すると、Brace Heightが動くことがあります。

ちなみに、上で参照した数値が載っている資料の初期設定値は次のようになっています。(ハンドル25”、ロングリム の組み合わせの70”の弓の場合)(単位はmmに変換)


項目
私の設定値
Bow Tuning tests
ゴールドプラン
FITA
Manual
EASTON
Gide
Brace Height
238~240
メーカ推奨値幅の上から1/4のところ
222~235
217~225
(注1)
217~225
(注1)
Nocking Point
7.6
3-5
またはTiller Heightと同じ
0(A)
1.6(C) (注2)
上下の幅 
3.2~4.8
5
15.3
Tiller Height
3.0
出荷のまま
3.2~6.3
 0
-
Arrow Centering
1/4(注4)
やや左
1/4(A)(注3)
0(C)
 やや左
弦の右端とポイントの右面が一致
 やや左
Plunger
Spring tension
注5)
50%
ネジ 1/16+
注6)
--40%50%

注1) Tuning前の値、Tuning後の推奨範囲は、216mm~248mm
注2) プランジャーの中心から、下のノッキグポイトまで、A:アルミシャフト、C:カーボンシャフト
注3) アルミシャフトは、プランジャーのセンタースライダーで1/4回転分左に出す、
    カーボンの場合はFull Center
注4) ポイントの1/4の幅だけ左に出す
注5) プランジャーの設定可能なばね圧の最小を0%、最大を100%とした場合のばね圧
注6) 中圧のばねで、中央より、圧調整ネジを1/16回転+側に回す(SHIBUYA DXプランジャー)

私の設定値(Tuning後の値)以外は、Tuning(実際に矢を射て調整すること)前の初期設定値でこれからTuningを開始し、一番グルーピングがよくなる組み合わせを探します。

さて、前置きが長くなりました、その2で本題のティラーハイトについて考えてみます。

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