今回は、その力のバランスについて考えてみます。
まず、矢筋の図に肩、ひじ、手首の関節とそれを結ぶ骨格を考えます。
大文字で表しているのが、引手側で
A: 引手の指が弦を引いている部分
B: 引手の手首の関節
C: 引手のひじ
D: 引手の肩
小文字で表しているのが、押側で
a: 押手の弓のピボットを押す部分(親指と指示指のV字部)
b: 押手の手首の関節
c: 押手のひじ
d: 押手の肩
Oの位置が背骨がある体の中心
矢筋を通すとは、a,b,A,B,Cの各点が直線上にならぶことです。
今回は、この矢筋が通った状態のバランスを考えます。また、実際の力は3次元で作用しますが、計算が簡単なように2次元で考えます。
はじめに、押手と引手にかかる力を考えます。
引手の指Aが15kg(赤の矢印)(約34ポンド)で引いた場合、その引きを支えるために押手aには、同じく15kg(黒の矢印)で向きが反対な力が掛かります。
弓はaで真直ぐ押され、Aで引かれバランスしますので、弓に動きとか、ねじれは発生しません。(矢の方向以外に力が掛かっていない理想の状態です。)
では、この状態で各部に発生する力を考えてみます。
まず、引手側のベクト図(力の方向と大きさを表した図)考えます。
A(指)が15kgで弦に引かれ、その力は、同一線上にあるB(手首の関節)を経由して、C(ひじ)を同じ力15kgで引きます。
この力は、C(ひじ)の関節で向きを変えCからD(肩)を押す力13.4kgとC(ひじ)を前側出そうとする力6.7kgに分解されます。
D(肩)では、押す力13.4kgが肩甲骨を体の中心に向かって押す力11.5kgと、後ろに押す力7.0kgに分解されます。
また、C(ひじ)で発生した力6.7kgは、D(肩)を中心に腕を前側に戻すモーメント(1.8kg-m)を発生させます。
まとめると、肩(D)では、
1) 体の中心に向かう力:11.5kg----- 押手側の力でバランスする
2) 肩を後ろに押す力:7.0kg ------- 肩回りの筋力経由で体全体で支える
3) 腕を前側に戻すモーメント(1.8kg-m) ------- 背筋で支える(主に広背筋:広背筋で引手を学ぶ)
となります。
次に、押手側を考えます。
部)を弓が15kgで押します。
この力は、b(手首)を尺屈(尺屈で押手を学ぶ)し、弓に不要な反力を発生させないように、真っ直ぐ受けなければなりません。
b(手首)では、c(ひじ)を経由してd(肩)に向かう力14.8kgと、腕を前に出そうとする力2.4kgに分けられます。
c(ひじ)を真っ直ぐ伸ばすことにより、入ってきた力14.8kgはそのまま、d(肩)を押す力となります。
d(肩)では、力は次のようになります。
1) 体の中心に向かう力:14.7kg----- 引手側の力でバランスする
2) 肩を後ろに押す力:1.3kg ------- 肩回りの筋力経由で体全体で支える
3) 腕を前側に戻すモーメント(1.4kg-m) ------- 背筋で支える
押手の肩(d)で発生する力も大きさは違いますが、引手の肩(D)と同じものになります。
この2つのベクトル図を合成すると、
結局、弓からの力は肩経由で体全体(主に、背中の筋肉、肩の筋肉、体幹)で受け止めることになります。
1) 両側から肩を圧縮する力(11.5kg)
2) 押手側から体の中心へ向かって押す力(3.3kg)
3) 体を後ろに押す力(7.0kg+1.3kg=8.3kg)
4) 引手・押手の腕を前に回すモーメント(引手:1.8kg-m、押手:1.4kg-m)
5) Oを中心に体回転させるモーメント( 3),4)の力のアンバランスによる)
結局、弓を引き・押す力は腕の力ではなく肩・背中・体幹と言うことになります。
また、この状態でリリースをすると、弓からの力が消え、肩回りで働いていた力が反発するため、次のようになります。
引手側は、
C(ひじ)を止めていたモーメントの影響で、C(ひじ)が背中側に動く。
決して、手首が後ろ(矢の方向)に動くのではありません。
押手側は、
b(手首)を止めていたモーメントの影響で、b(手首)が背中側に動く。
決して、b(手首)が体より前に側に動くことはありません。
B(引手の手首)に力が入り、A-Cの直線上にないとBで力の方向が変更され、離れリリースになります。また、リリースで、引手の指が首から離れて後ろ(矢の方向)に動きます。
リリースで引手の指以外の力を抜いてしまうと、戻りリリースや押手が体より前に動く緩んだリリースになります。
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