2017年5月26日金曜日

伸び合いを考える

リリース直前にアンカーから数ミリ引いて(押して)クリッカーを落とします

この動作は伸び合い・ファイナルドロー・エクステンション等呼び方が色々あるように、その実現の方法(意識)も色々あるようです。

具体的には、
  • アンカーに入れる時の引手の引き動作を継続させる意識で引く
  • 引手の肘を締める意識で引く
  • 押手を的に押し込む意識で押す
  • 引手の肘を背中の方向に回す意識で引く
  • 背中(バックテンション)を使う意識で押し・引く
  • 上記の複合技で伸びあう意識
----------------------------------------2017/05/29 追記------------
World Archery Coach's Manual : Entry Levelに伸び合いの肩甲骨等の使い方について幾つか例が記載されていましたので、箇条書きにて紹介します。

6.10. DRAW EXPANSION
Other common names for this essential technical skill: “Full draw efforts”, “Draw increase”, “Extension/expansion

Bow Scapula action:  押手の肩甲骨を動かす方法
  • 押手の肩甲骨を前(的側)に出す
Various String Scapula Actions: 色々な引手の肩甲骨動作

引手の肩甲骨では、伸び合いとして幾つかの方法がある
  • 肩甲骨を背骨側に寄せる
  • または、背骨から離す
  • または、動かさない
1. 引手の肩甲骨を背骨側に寄せる方法
1.1.引手の肩甲骨を背骨側に水平に寄せる、“BackTension”として知らている
1.2.引手の肩甲骨を尾骶骨の方向(斜め下)に寄せる
1.3.引手の肘を上側に動かし、引手の肩甲骨を上にあげる

2. 引手の肩甲骨を背骨から離す方法
2.1 引手の肘を水平に後方(的から離れる方向)に引く
2.2 引手の肘を水平より下向き後方(的から離れる方向)に引く
2.3 引手の肘を水平より上向き後方(的から離れる方向)に引く

3. 引手の肩甲骨を動かさない方法
引手の肘を水平に斜め後ろに引き、肩甲骨を動かさない(多くのアーチャーがこの方法を自然に行っている

などが記載されています。
---------------------------------------2017/05/29追記終わり------
等々ですが、どの意識(動作)も共通して、ドローイングで使用した背筋(背中の色々な筋肉)を用いて、両肩の肩甲骨を近づけるなど、猫背にしようとする弓からの力(矢筋のバランスを考える)に対抗して最後の数ミリを伸びます。

(写真は、Back tension: How to execute a shot with a recurve bow | Archery 360より引用 )


また、このとき両方の肩甲骨を背骨側に寄せる背筋(大・小菱形筋)は、肩甲骨の内側縁で前鋸筋と繋がっており(筋連結)、共同して働くことで肩甲骨を安定させています


菱形筋:肩甲骨に下方回旋と内転を起こす
前鋸筋:肩甲骨に上方回旋と外転を起こす

は,肩甲骨に対しまったく逆の動きを起こさせるものですが、相互に連携して肩甲骨(肩の位置)を安定させています。

また、菱形筋、前鋸筋とも肩甲骨を安定させるとともに肩甲骨(肩)を下に引く働きがあり、最後の伸び合が完成するときには、肩が少し下がっているはずです。

逆説的に言えば、伸び合いで肩をほんの少し下げることができれば、クリッカーが切れるかもしれません。

前に書いた、呼吸について考える息を軽く吐きながら、リリース(クリッカーを切る)とも符合します。

力を使っていない時、胸に溜まった息を吐くと、体の中の空気が抜け肩(肩甲骨)が自然に下がります。

背中の力を使っているときでも、菱形筋、前鋸筋の働きで肩甲骨が安定(静止でバランス)している状態で、体の空気をぬけば、肩が自然に下がり伸び合が完成し、クリッカーが落ちることになります。

と言うことで、私は、伸び合の時、息をを吐くことを意識しクリッカーを切るようにしています。(このとき、引く・押すの力を決して緩めてはいけません、緩めては、息を抜いただけではクリッカーは切れません。)

2017年4月24日月曜日

スピンベーン専用フレッチャーを作る


スピンベーンの説明書(FLETCHING INSTRUCTION FOR ORIGINAL SPIN-WING  VANES) のFigure 4.には、一般の羽に比べてちょっと変わった位置に貼るように説明されています。 

具体的に説明図を読み解いてみます。


Figure 4.の図に補助線を引いたのが左の図です。

スピンベーン(青-右利き用)は、一般的な右利きの羽(赤)の位置より左利き(ピンク)の位置の近くにあります。

正確には、左利きの羽(ピンク)より15°反時計回に回転させた位置にスピンベーンの端があります。

120°用のフレッチャーで線を引いた場合、その線は、赤またはピンクの位置には引くことができますが、青(スピンベーン用)の線を直接引くことはできません。

15°の違いはどうすれば実現できるでしょうか?
まず、フレッチャーに矢を左利き用の線が引けるようにセットします。


A) 線を引き、線の中心に羽の端を合せて貼る、ノックを15°時計回りに回す
B) 線を引き、線に中心から15°離れた位置に羽の端を合せて貼る
C) 15°離れた位置に線を引き、線の中心に羽の端を合せて貼る

などがあると思います。

上の図では15°の違いは相当あるように見えますが、実際の矢の円周上での距離は、直径6mmの矢の場合、約0.8mmになります。

0.8mmは、矢に引く線の幅と同じぐらいですので、私は、

D) 線を引く時にちょっと加減して、線の幅半分分ずらして線を引き、線幅の片側がフレッチャーの作る線で、その反対側が15°ずれた線、その線の端に羽の端を合せて貼る

を行っています。

しかし、この15°には大した意味はなく、こんな感じでスピンベーンを貼れば、羽がレストに接触する可能性が低くなことを説明しているだけだと思います。

そんな訳で、「フレッチャーで引いた線の中心にテープの中心を合わせ、テープの端に羽の端を合せる」もありかと思います。

テープは約2.5mm幅なので、片側1.25mm(24°)ぐらい、僅か0.45mm差です、手で貼っている限り、これくらいの誤差は発生すると思いますので、深く考える必要はないレベルです。

最近のスピンベーンの説明書では、120°用のフレッチャーで線を引き、スピンベーンを貼った後で「レストに対し適正なクリアランスが確保できるようにノックを回せ」Aと同じ)と記述されています。

また、回す量(角度)と方向は人それぞれと言ったところで、万人に最適なものはなく、羽がレストに接触する場合は、ノックくを僅かに回して調整します。

1) 矢の上側の羽がレストに接触する場合
矢の回転が速いので15°が大きくなるように時計回りにノックを回し、羽がレストに最接近するタイミングを遅らせます。

2) 右側の羽がレストに接触する場合
矢の回転が遅いので15°が小さくなるように反時計回りにノックを回し、羽がレストを通過するタイミングを早めます。

前置きが長くなりました
私の場合、上の図の通り15°ノックを回した位置で、レストと羽が干渉しないので、図の通り羽を貼っています。

今回、この15°を正確に設定できるスピンベーン専用のフレッチャーを作成しました。(単なる趣味ですが)

外観はこんな感じです。
白いバーの下に矢を入れます。

部品代は、5百円といったところ。(百均でそろえた)
白いバー: 磁石で紙を止めるのもの外側
円盤: 木製茶たく


時計(木製茶たく)の文字盤、中心のノブを回すと矢が回ります。
回転角度は針で表示。

矢は360°好きな位置に回すことができますが、120°ごと(赤い線)に固定用のピンを刺すことができるようになっています。

また、弦(中心にある黒い線)の位置は、15°のオフセットをつけているので白いバーの中心線が、羽の端の位置となります。



この位置に合わせて羽を貼れば、線を引かずに羽を貼ることができます。

45mmのスピンベーン専用のホルダーを使い、じかに羽を貼っているところ。




1枚貼り終わり
両面テープホルダー
45mmのスピンベーンホルダー

ホルダーを使わずに、バーに羽をセットできるよに改造。(2017/05/05)
クリップホルダー

クリップホルダーをセット

フレッチャーにセット

2017年4月5日水曜日

グリップの改造

グリップを改造してみました。
今までに何回も改造していましたが、久々に大きく形を変えたので、その内容と改造の方法を書きます。
グリップの押し方を少し変えたら、なんだか当たりが不安定なので思いきって変えてみました。


今までは、グリップのピボット部を主に押し、手のひらにはほとんど触れない押し方をしていましたが、分けあって、ピボットと親指の根本のふくらみ(ピボットから1cm~2.5cm下)を圧力ポイントに変更してみました。(詳細は別途)

その時、圧力ポイントの当たりがしっくりこなかったので、当たる部分の面積の広かったグリップの形状を、細く長いものに変更しました。

右が改造前、左が改造後。

大きく丸みがあったものを、押手の生命線がグリップの左端にピッタリ合うように、手の大きさに合わせて改造しました。

結果、押手の座りがよくなったように感じます。



以前(右)は手のひらが接触しないようにピボットの近くを直角に近くし、その後(下の方)は、丸みを持たせてクリップの元の角度に合わせていましたが、今(左)はピボットから直線的な平面になるようにしました。



改造の方法は、次の手順で行っています。


1. エポキシパテ(グリップメーカーやその他)の造形剤で土台を作っる。
固くて、グリップにシッカリ接着されるで、次に使うシリコン素材が取れないようにグリップとパテの間に引っかかりを作る




2. 熱変形シリコン(型想い等)を熱して自由に変形できるようにし、エポキシパテの上に重なて造形していく。

冷めてくると、固くなってくるので、必要に応じヒートガンで熱しながら造形する。
追加が必要な時は、追加される部分を熱した上で、追加の柔らかい熱変形シリコンを重ねることにより一体化される。

熱い時は、非常に柔らかいが、少し冷めると適度な柔らかさになるので、ヘラ、丸棒などで押さえると、色々な形になる。

完全に冷える(室温になる)と硬化するので、グリップとして使える十分な硬さとなる。(熱すれば再度、柔らかくなる。)

3. 調整(試射をした後等)
大まかな形を2で作ったら、変形したい部分のみを熱し、柔らかくしてヘラなどで調整する。
形が自由になるので、すべてエポキシパテで作るより改造が非常に楽です

4.接着
シリコン樹脂を直接接着したい場合は、熱変形シリコンで貼りつける物の型どりをし、樹脂が硬化した後、シリコン用のプライマーを塗布し、瞬間接着剤で貼り付ける。(取れやすので強度が必要なところには不向き)

グリップの変遷(改造の履歴は数えられませんが、大きなもは3回です)


改造する前。










最初の改造、握れないように左にこぶをつけています。








先日まで使用していたもの。
ピボットの押やすさを主眼にした形。


左、今回の改造、試射前。
右、試射後、下に伸ばした。
ハイリストグリップと言われるものに近いと思います、角度は前のピボット押しと同じで、だいぶ深くできています。

試射の結果、手のひらよりグリップを長くし、生命線の終わりまで、グリップに当たるようにしました。


2017年4月3日月曜日

リムのおへその名前

リムのおへそ、リムをハンドルに入れる時にカッチと音がするおへそ
でべその様に真ん中にポッチがある、ばねが入っている丸いガイドのような物。

左の金属製の部品。名前がわからないので調べてみた。

丸いところの名前は、Dovetail (ピッタリはめる)、中の動くピンは Detent (戻りどめ)と言うみたいです。

Dovetailと言う名前で一式が部品として売らています。
渋谷アーチェリーでは、(HOYT)「 リムガイドキットセット」の名前で売られていますので、ガイドもはずれではないようです。

さて、この部品の役目はなでしょうか?
Hoytのマニュアルには、

Carefully align the limb dovetail bushing with the corresponding slot in the riser pocket. Push the limb into the pocket until the detent button engages. You will feel or hear a light “click” when this occurs, and the limb will stay in place under its own weight when fully seated.

とあるので、カッチと音がするおへそも間違いではないようです。
このカッチ感は、リムを所定の位置にしっかり入れ、自重では動かないようにするためものです。

このおへその役目は2つ
1)Dovetail : 正確な位置にピッタリ合わせる   -----外側の丸い金属部品
2)Detent : 弦を張るまで自重で動いて戻るの防止する ---- ばねとピン

最近、Detent(ばねとピン)のないリムを組み立ている人がいたので、「なぜか?」と聞くと、「はずれて無くした」との返事。

無事に弦を張ることが出来れば、Detent(ばねとピン)はなくても問題なさそうですが、「弦を張る途中でリムが外れると事故につながりますよ」と先輩に注意されていました。

このDovetail 案外良くはずれるようです、最近、2人に問題がありました。
一人は、前記のなくした人。
もう一人は、異音がするので調べてみたら、ネジがゆんるんでいた人。

緩める必要がないネジには、「回り止め」を付けておくのも事前の対策になるかもしれません。

矢筋のバランスを考える

矢筋を考えるや その2 その3で矢筋の形について考えてみました。
今回は、その力のバランスについて考えてみます。

まず、矢筋の図に肩、ひじ、手首の関節とそれを結ぶ骨格を考えます。

大文字で表しているのが、引手側で
A: 引手の指が弦を引いている部分
B: 引手の手首の関節
C: 引手のひじ
D: 引手の肩

小文字で表しているのが、押側で
a: 押手の弓のピボットを押す部分(親指と指示指のV字部)
b: 押手の手首の関節
c: 押手のひじ
d: 押手の肩

Oの位置が背骨がある体の中心

矢筋を通すとは、a,b,A,B,Cの各点が直線上にならぶことです。
今回は、この矢筋が通った状態のバランスを考えます。また、実際の力は3次元で作用しますが、計算が簡単なように2次元で考えます。

はじめに、押手と引手にかかる力を考えます。
引手の指Aが15kg(赤の矢印)(約34ポンド)で引いた場合、その引きを支えるために押手aには、同じく15kg(黒の矢印)で向きが反対な力が掛かります。
弓はaで真直ぐ押され、Aで引かれバランスしますので、弓に動きとか、ねじれは発生しません。(矢の方向以外に力が掛かっていない理想の状態です。)

では、この状態で各部に発生する力を考えてみます。
まず、引手側のベクト図(力の方向と大きさを表した図)考えます。


A(指)が15kgで弦に引かれ、その力は、同一線上にあるB(手首の関節)を経由して、C(ひじ)を同じ力15kgで引きます。

この力は、C(ひじ)の関節で向きを変えCからD(肩)を押す力13.4kgとC(ひじ)を前側出そうとする力6.7kgに分解されます。

D(肩)では、押す力13.4kgが肩甲骨を体の中心に向かって押す力11.5kgと、後ろに押す力7.0kgに分解されます。
また、C(ひじ)で発生した力6.7kgは、D(肩)を中心に腕を前側に戻すモーメント(1.8kg-m)を発生させます。

まとめると、肩(D)では、
   1) 体の中心に向かう力:11.5kg----- 押手側の力でバランスする
   2) 肩を後ろに押す力:7.0kg ------- 肩回りの筋力経由で体全体で支える
   3) 腕を前側に戻すモーメント(1.8kg-m) ------- 背筋で支える(主に広背筋広背筋で引手を学ぶ
となります。

次に、押手側を考えます。
a(親指と指示指のV字
部)を弓が15kgで押します。

この力は、b(手首)を尺屈尺屈で押手を学ぶ)し、弓に不要な反力を発生させないように、真っ直ぐ受けなければなりません。

b(手首)では、c(ひじ)を経由してd(肩)に向かう力14.8kgと、腕を前に出そうとする力2.4kgに分けられます。

c(ひじ)を真っ直ぐ伸ばすことにより、入ってきた力14.8kgはそのまま、d(肩)を押す力となります。

d(肩)では、力は次のようになります。
   1) 体の中心に向かう力:14.7kg----- 引手側の力でバランスする
   2) 肩を後ろに押す力:1.3kg ------- 肩回りの筋力経由で体全体で支える
   3) 腕を前側に戻すモーメント(1.4kg-m) ------- 背筋で支える

押手の肩(d)で発生する力も大きさは違いますが、引手の肩(D)と同じものになります。


この2つのベクトル図を合成すると、
引手側の肩(D)の体の中心に向かう力は、押手側の体の中心に向かう力で打ち消され、押手側の3.3kgが残ります。

結局、弓からの力は肩経由で体全体(主に、背中の筋肉、肩の筋肉、体幹)で受け止めることになります。
   1) 両側から肩を圧縮する力(11.5kg)
   2) 押手側から体の中心へ向かって押す力(3.3kg)
   3) 体を後ろに押す力(7.0kg+1.3kg=8.3kg)
   4) 引手・押手の腕を前に回すモーメント(引手:1.8kg-m、押手:1.4kg-m)
   5) Oを中心に体回転させるモーメント( 3),4)の力のアンバランスによる)

結局、弓を引き・押す力は腕の力ではなく肩・背中・体幹と言うことになります。
また、この状態でリリースをすると、弓からの力が消え、肩回りで働いていた力が反発するため、次のようになります。

引手側は、
C(ひじ)を止めていたモーメントの影響で、C(ひじ)が背中側に動く
決して、手首が後ろ(矢の方向)に動くのではありません。

押手側は、
b(手首)を止めていたモーメントの影響で、b(手首)が背中側に動く
決して、b(手首)が体より前に側に動くことはありません。

B(引手の手首)に力が入り、A-Cの直線上にないとBで力の方向が変更され、離れリリースになります。また、リリースで、引手の指が首から離れて後ろ(矢の方向)に動きます。

リリースで引手の指以外の力を抜いてしまうと、戻りリリースや押手が体より前に動く緩んだリリースになります

2017年3月19日日曜日

プランジャーの働き

ベアシャフトチューニングでプンランジャーのばね圧を調整してみた。
その時、プランジャーのチップ(テフロンの動く部品)をやすりで整形しました。

チップ 新品(左)と修正済み(右)

新品に代えずにやすりで削ったので、矢が金属の筒(ケーシング)に当たってしまわないかチップの必要可動域を調べました。

ARCHERY AUSTRALIAの Coaching Tips 2 RECURVE BOW TUNINGによれば、必要可動域は0.5mmから1mmとのことで、かなり削ってもOKのようです。

その中に、色々なことが書いてあったので要約して紹介します。また、プランジャーの動く様子を紹介する動画(OLYMPIC ARCHERY EXPLAINED: THE PLUNGER も合わせ紹介します。(ここに記載する内容はすべて、二つのサイトからデータを取得しています)。

1)プランジャーの動きOLYMPIC ARCHERY EXPLAINED: THE PLUNGER
1秒を1000秒に伸ばした動画

説明のため動画から静止画を切り出し(0.02秒を分割)
矢の動き:
動画は、前から撮影されていますが、説明はアーチャー側から見た時の動きとして左右を逆にしています。

・リリース直後(弦が指から左方向に滑り出た直後)から矢は右に曲がりはじめ、プランジャーを押す

・右に曲がった矢はプランジャーのばねで左側に押し出され、ほぼ真っ直ぐになりプランジャーから離れる

・(この動画の場合)再度、矢は右側に少し曲がるが、弦が右側に移動するのに従い大ききく左側に曲がる

・その後、弦から離れた矢はレスト・プランジャーをかわすように真っすぐになりながら矢の横を通過する

・動画を1フレームごとに読みとったもの

2) プランジャーの働き (Coaching Tips 2 RECURVE BOW TUNING)より要約
・矢が振動するのは普通のことであり、矢が弓と干渉しないために重要なことである

・矢の振動の大きさは、アーチャーの能力及びリリースの質による

・矢の振動数は約50サイクル(1秒間に50回振動する)

・約 20msec (20/1000秒)で矢は弓から離れる

・正しい矢を選択し、アンカーからポイントの位置までを1サイクルで弓を通過するようにTunningを試みる

・1サイクルの間に矢は弓を通過する、それより多くても、少なくても弓と干渉する

・矢の振動は、矢が的に刺さるまで続く

・リリースから10mmから20mm進む間に、プランジャーを0.5mmから1mm押す
(押す量は、質の悪いリリースほど増加する)

・20mm~30mm矢が前に進む間プランジャーを押し続ける,その後、矢はプランジャーから離れ、そのあと振動が大きくなる

・チューニングが上手くいっていないと、矢はレストまたはプランジャーに当たる

プランジャーの働きは、矢の軌道をセンターショット(のライン)に乗せることである


2017年3月18日土曜日

ベアシャフトチューニングを考える

久しぶりにベアシャフトチューニングを試みました。
ベアシャフトチューニングは、羽ありの矢と羽なしの矢を射てみて、両者の刺さる位置が大体同じになるようにするチューニング手法です。

調整するのは、
1) ノッキングポイントの高さ
2) プランジャーのばね圧

の2点です。

ネットで調べてみたところ、「羽なしと羽ありが同じ位置に刺さされば矢のスパインが弓に合っている」とのことです。

スパインが合っていると言うことは、「矢の蛇行振動(矢のパラドックと呼ばれる振動)の2つの節が、的の中心へ向かう直線上を飛翔する」と言い換えられます。(パラドックスの話は、こちらを参照)

ベアシャフトチューニングは、羽ありの矢より,羽なしの矢の方が羽による修正力が働かないため、スパインの影響が顕著に表れる特徴を用いて矢の飛びを調整します。

また、このことは、
1)羽ありの矢は、空気抵抗のエネルギーロスが多い
(羽の効果により軌道は修正され、安定した軌跡を描きます)

2) 羽なしの矢は、空気抵抗のエネルギーロスが少ない
(軌跡の安定性は劣りますが、羽の空気抵抗がないため)

このエネルギーロスが少ない羽なしの矢が刺さる位置に、羽ありの矢も刺されてば、羽によるエネルギーロスが最少になるのではと、私は考えています。

なお、スパインが合っていない矢では、よいグルーピングは望めませんが、スパインが合っていても、よいグルーピングになるとは限りません。

ベアシャフトチューニングの方法は、色々ネットで公開されていますので、詳細はそちらを参照いただくとして、私が実際に行った内容を簡単に紹介します。

1.前準備 (前回のセッティングと同じに合わせる:半年で微妙にずれている)
1) プランジャーのチップを修正(チップ先端がすり減っているので、ヤスリで平面に)
2) 新品の弦に交換
3) センターショットを再調整(センターショット参照)
4) 矢のOff setをポイント1/4分左に振り出す(注1)
5) ブレースハイトの確認
6) ティラーハイトの確認
7) ノッキングポイント:高さ 1/4インチで作る(前と同じ)(注2)
8) 羽つき矢3本と羽なし矢を2本を準備(2本の羽を取っただけ)
9) サイトの水平位置をセンターショットに合わせる
10)垂直方向のサイトは、試射6本で決める

注1) 矢のセンターショットからのずれ(Offset、Arrow Arraignment)はプラジャーのセンタースライダーを半回転させ0.5mm出すとポイント1/4分になる(私の場合)

注2) 5/16と4/16インチの高さ2ケースで高さ方向のグルーピングがよい4/16を採用

2. ベアシャフトチューニング
1) ゴールドを外すことがない距離18m、80cm的(5rings)
私の能力では、18m、80cm的のゴールドを外すことはないが、30mでは8点がしばしば出てテストにならないので、18mを採用。

2) プランジャ―のばね圧は、中間強さのばねの中間点から締める方向に1と3/8回転から始める(30mでグルーピングがよさそうなネジの回転数)
2) 一つのばね圧(ネジの回転数)で羽つき3本、羽なし2本をランダムに4セット(計20本)射ち矢の様子を写真に撮る
はじめの射で、ノッキングポイントの高さの変更が必要なら、はじめにノッキングポイントを合わせる。(今回は必要なかった)
3) ばね圧をネジの回転数で1/8回転ずつ締めて2)を3回繰り返し
4) 一回と3/8回転からばね圧をネジの回転数で1/8回転づつ緩めて2)を3回繰り返す
5) 20本x7ケースのデータを的上にプロットし、羽なし矢が羽つきの少し左・下(注3)にグルーピングし、羽付き矢のグルーピングが一番良いもを探す。

注3) Bow Tuning tests より

A common practice is to tune for a bare shaft impact slightly low and left of the fletched group for a right-handed archer



写真は、ネジの回転数:11/8回転締めの4回計20本のデータですが、グルーピングがいいのか悪いのかよくわかりません。

これを、的にプロットすると、羽つき(黒い点)は、10点の円より小さい円の中にグルーピングしています。また、羽なし(赤い点)は、羽つきのやや左下に点在しています。



ネジの回転数11/2回転締めたデータをプロット(下図)すると、羽つき(青の点)は10点の円より大きい円でグルーピングしています。羽なし(緑の点)は左側、やや下に羽つきより小さな円でグル-ピングしています。


ベアシャフトチューニングとしては、ネジの回転数11/2回転の方が良い結果に見えますが、2つを重ねると、ネジの回転数:11/8回転の方が羽なし、羽つきを一緒にしたグルーピングはよく見えます。
また、羽ありのグルーピングは11/8回転の方が良いので、今回のベアシャフトチューニングの結果は、11/8回転としました。

今回の7ケースのばね圧では、羽つきと羽なしの位置関係はほとんど同じに見えて、違いはないので、結局、羽つきのグルーピングの良さでばね圧をきめました。

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ARCHERY AUSTRALIAの Coaching Tips 2 RECURVE BOW TUNING にプランジャーのばね圧を調整するのではなく、弓のポンドと矢のセンターショットからのずれ(Offset、Arrow Arraignment)を調整する方法が紹介されていましたので、その概略を以下に記載します。

1) はじめにプランジャーのばねを抜き、ばねの代わり棒を入れて、ばねが働かないようにする(プランジャーのチップが動かないようにする)

2) 矢の方向をセンターショットに合わせる(OffSetを0にする)

3)15-20mの距離で、羽つき(2-3本)羽なし(2-3本)を射ちノッキンクポイントの高さをチェックし、両方の矢が同じ高さになるようにノッキンクポイントの高さ調整する。(一般のベアシャフトチューニングと同じ)

4) 次に、羽つきと羽なしを同様に射ち、羽なしが右側に行けば、弓のポンドを下げ、左に行けばボンドを上げで同じ位置に刺さるようにする。(右射ちの場合)

弓のポンド調整で矢のスパインと合わせる方法で、弓のポンド調整でうまく合わない場合は、矢を交換するか、他の方法を考える。(一般のベアシャフトチューニングでは、矢のスパインと弓のポンドはそこそこあっているのを前提にばね圧で微調整をしている)

5) プランジャーのばねが働かない状態で、サイトを調整して矢が的の中心にグルーピングするようにする。

6)サイトの位置を変えずに、プランジャーのスプリングを中間のばねのその中間に調整する。

7) センターショットからポイント半分左側に矢が出るように矢の振り出しを調整する。

8) 羽つきの矢を射て、的の左にグルーピングするようであれば、矢の振り出しを右に戻し、矢のグルーピングが的の中心にくるようにする調整する。(右にブルーピングすれば反対に動かす)

2017年1月10日火曜日

折れたノックをとる

継ぎ矢でノックが破損し、ノックを抜くのに苦労したたことがありますか?

ノックピンを使用したアウタータイプは、ノックが破損しても外れなくなることはありませんが、インナータイプ(Gノック等)の場合、ノックの外に出ている部分がなくなってしまうと、残った部分をとりだすのにちょっと細工が必要です。

左のような場合は素手でもペンチでも簡単に抜けますが、




外に出た部分がなくなってしまうと、うまく掴めずにノックを抜くことができません。
そんな時に、タッピングビスをノックにネジ込むと簡単に外すことができます。


ノックが緩く(注)、ノックに糊(ステック糊)をつけた場合、ノックを矢に密着させてしまうため、タッピングビスでは抜けないことがあります。



そんなん時は、3mm径のドリルを用意して、ノックの内側を削り、厚さを薄くするととれることがあります。
(ドリルの刃を素手で回してください、電動を使うと振動で矢が割れます)

それでも取れない時は、4mmのドリルでさらにノックの内側を削るとノックが割れて、矢から取れます。(取れない時もあり)
矢の内径は4.2mm程度ですので、4㎜のドリルで削るとノックが薄くなり自然に割れてしまいます。(割れないで綺麗に取れることもあり)

接着剤でノックをつけると、ノックを外すとき矢が破損することがあり、ノックには接着剤を使わない方が無難です。

注)ノックが緩いときステック糊(他の接着剤でも同じ)を使う場合、ノックにつけた糊が完全に乾いてから矢に取り付けください。 接着能力が残っているとノックが矢に固着する可能性があります。

糊は、あくまでもスペーサーの代わりに塗布します